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デザイナーは「FAB」で何ができるか?

FABに関する記事、書籍、講演会についての感想及びレビュー

倉敷市玉島 “ IDEA R LAB ” で感じた「豊かさ」について

5月3日、GWの真ん中で岡山は倉敷市、玉島へ行ってきました。
訪ねたのは「IDEA R LAB」。日本初のクリエイティブリユースの拠点であり、クリエイティブリユースのための情報プラットフォーム、実験室、レジデンスとしての機能を果たしている場所です。
(IDEA R LAB http://www.idea-r-lab.jp/
クリエイティブリユースとは、家庭や企業から日常的に生み出される廃材をそのまま廃棄せず、人のクリエイティビティー(創造性)を使って、これまで見たこともなかった素敵なものに生まれ変わらせる取り組みのこと。

「クリエイティブリユース―廃材と循環するモノ・コト・ヒト」を読み、その魅力と可能性を感じた僕は、勢いで見学の予約をし、その場所を見に行くことにした。本の著者であり、IDEA R LAB 主宰である大月ヒロ子さんは急な連絡で(しかも会ったこともない)僕の申し出に対して、あっさりと快諾してくれたのですが、今思えばIDEA R LABのオープンでウェルカムな空気感はその時からすでに漂っていました。

新倉敷駅からバスで10分ほど移動し、玉島中央町のバス停を降りて5分ほど歩いたところに、焼杉の壁に囲まれ、大きなガラス窓が構えられた建物がある。そこが、IDEA R LABです。

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玉島は、かつて北前船の漁港・卸の街として栄えた町らしく、江戸時代からあるような古い蔵や家屋がたくさんありました。
都心や郊外では見られない、ゆったりとした町の雰囲気と、当時の趣のまま残されている建物がもつ世界観は、都心の慌ただしさを忘れさせてくれます。
そんな古き良き玉島の地にあるIDEA R LABはクリエイティビティという点で周りの建物とはまた違う感じの雰囲気をもっていました。
実家である古民家を改装して作られたというその建物はクリエイティブリユースに必要な「美意識」と「編集」が感じられました。
都会のオシャレスポットみたいなところに建っていてもおかしくない洗練された格好良さがあるのですが、玉島の街並みにもとても馴染んでいました。

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中に入ると、卓球台のテーブルが置かれた、白い空間が広がります。床はグレーで塗られたベニヤが敷かれており、それもまた格好良い。
ここでワークショップなどが開かれるそうなのですが、このスペースは全面ガラス戸になっているので、様子は丸わかり。IDEA R RABのオープンな空気はそこからも強く感じられます。

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かつて木造の母屋だった所は、訪れる人たちが宿泊できる場として改修されています。中央のガラス戸のスペースとはうってかわって重厚な畳の空間で、小説家が執筆でもしてそうな、とても落ち着ける場所になっていました。

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IDEA R LABと同じ通り沿いにある、廃材の収集・整理・ストックの実験を行う「マテリアルライブラリー」。元々熱帯魚店だったところを改装したとのこと。
廃材を丁寧に選別し、整理整頓されて美しく並べられた「廃材の編集」を垣間見ることができる空間になっていました。

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このように編集・整理された廃材が持つものづくりのインスピレーションのパワーは本当にすごいです。
ゴミになるはずだった廃材が、このように整理されることで見た人をワクワクさせる「素材」になる、これがクリエイティブリユースにおいて最も大事なポイントだと僕は思います。モノ自体は何も変わらないのに、その価値を変化させることができる「デザイン」がもつ力を改めて感じました。
ライブラリーにある素材はワークショップ用ということで、販売はされていないとのこと。歯がゆさを感じながらも、これはまた来るしかないな…、と僕は強く思ったのでした。

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ライブラリーにはクリエイティブリユースで生まれたプロダクトも展示されており、カセットテープを利用したケース、レコードを利用したバッグなど、お店では絶対売っていないようなクリエイティブリユースならではのモノがたくさんありました。
プロダクトを作る際にもまたデザインの重要性を強く感じます。素材のマッチングや形や余白の活かし方など、プロの手にかかれば廃材は一点モノのどこでも買うことができない魅力的なプロダクトになるのです。

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ライブラリー内にはFABスペースもあり、カッティングプロッタ・3Dプリンター・レーザーカッター・CNCミリングマシンなど、一通りの機材が揃っており、非常に贅沢な空間となっておりました。機材の活用はまだそこまでされてなさそうでしたので、今後の発展に期待です。これだけ多様なマテリアルとFABツール一式が揃った空間、羨ましいという言葉しか出ず。なんでもできそうな気がする、可能性無限大の空間です。

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マテリアル・ライブラリー見学の後は、IDEA R LABの向かいにある畑へ。ここの畑で大月さんはご近所の方々とみんな野菜を育てているそうで、レモングラス、ミント、さくらんぼ、大葉、フキ、ネギなどいろんな作物が育っていました。
大月さんが「今日の晩御飯の材料をここから調達しよう」と言い、籠とハサミを手渡され、最初はびっくりしたのですが、気づけば収穫を楽しんでいる自分がいました。

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ラボには立派なキッチンもあり、町の皆さんとよく一緒に料理をされるそうです。
それぞれが持ち寄った食材を使って、料理を楽しむシェアキッチン、こういったコミュニケーションは町全体がゆるやかにつながっている玉島ならではだと思います。
一緒に収穫して、料理して、食事を楽しむ、たった1日の体験だったのですが、普段感じることのできない暮らしの「豊かさ」みたいなものを感じました。
廃材ワークショップも料理も、そういうコミュニケーションを促すという意味では一緒なのかもしれません。
そういった意味で、IDEA R LABは「ガラス戸のワークショップスペース」、「シェアキッチン」、「参加者が休憩できる母屋スペース」、肩肘をはらずにたくさんの人とコミュニティを作れるとても良い環境が整っているように感じます。
それが、玉島の土地性ととてもフィットしている。
この土地を良く知る大月さんだからこそできた空間作りではないでしょうか。

自分たちで収穫したフキとさくらんぼ、近所の方からいただいたトマト、スーパーで買ったタコを調理し、美味しい夜ご飯をいただきました。



今回、ワークショップ参加はせず、見学だけという形でしたが、それだけでこの空間が持つ良さを強く感じることができました。
玉島に訪れるまでは、なぜこの場所にクリエイティブリユースの拠点を作ったのだろうと正直思っていました。
ムーブメントを起こすには、ツールやデザイナーの環境も整っている都心のほうが良いのでは、という感覚がありました。
しかし、実際訪れて、体感してみると1日もあれば、その理由がわかります。
IDEA R LAB は単なる空間ではなく、コミュニティそのものです。
そして、大月さんとその周りを取り巻くコアメンバーの方々の人格がそのコミュニティの色になっているのです。
感じたのは、背伸びのしない身の丈にあった生活を送るという考え方です。
自分たちが幸せや豊かさを感じられる範囲の活動で無理をせずに、身近なところから活動を広げておられます。けれど、ゆっくりとですが、確実にその輪は広がっています。
おそらく大月さんはちょうどよい大きさの感覚がわかっているんだと思います。
「豊かさ」を失わないためにはどうすればいいか、ということを。

色々なコミュニティがあってよいのだと思います。ファブラボといったような、一般市民がオープンなコミュニティをつくって「ものづくりによる暮らしの豊かさ」について各々が考え、行動するような流れが今の日本にはあります。
中には、IDEA R LABと同じように廃材を再利用する取り組みをホームセンターと協力して行っているファブラボもあったりしますが、それぞれのコミュニティの色は違います。商売に結びつけたりつけなかったり、アートにふったり、デザインにふったり、それはそのコミュニティの主宰者やコアメンバーの考え方次第に変わると思います。
廃材に着目してみても、IDEA R LABと中間処理業のナカダイとホームセンターでは扱うものがそれぞれ違います。
大切なのは、それぞれが日々の暮らしを、受動的ではなく、能動的に生きようとすることだと思います。大げさな言い方かもしれませんが、コミュニティにはそういった力を感じますし、僕はそこに惹かれています。

IDEA R LABのようなコミュニティが日本中にもっとたくさんできれば良いな、と思います。重要なのは大きさではなく、数だと思います。
コミュニティ同士でも協力し合い、各々の活動を尊重する、そんな環境が整っていけば、毎日がより楽しくなるかもしれません。

とにもかくにも、玉島とIDEA R LABは本当に良いところでした。
地域コミュニティの良さの印象が強くて、クリエイティブ・リユースについてあまりふれられなかったので、次はそちらのレポートをしたいと思います。

必ずまた行きます、玉島。