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デザイナーは「FAB」で何ができるか?

FABに関する記事、書籍、講演会についての感想及びレビュー

FABと福祉 GOODJOB!セミナーに参加して

2月28日(日)にグランフロント大阪で開催されていたGOODJOB!展とGOODJOB!セミナーに参加した。

GOODJOB!展とは、障害のある人達の活動をアーカイブしたものであり、キーワードとして「新しい仕事」という言葉が挙げられている。
GOODJOB!AWARDと題して展示されていた作品の中には独創的でユニークなものが多くあり、障害のある人達の可能性を活かした取り組みになっていた
http://exhibition.goodjobproject.com/exhibitor/作品一覧ページ

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GOODJOB!展 会場の様子

それでは、どうすれば障害の中から新しい仕事を生み出すことが出来るのか?
その答えはGOODJOB!展に紐づく形で実施されたGOODJOB!セミナーの中で教えてもらうことができた。

GOODJOB!セミナーのメインテーマは「FABと福祉」。
福祉とデザインというカテゴリーについては、学芸出版社の「インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン」(ジュリア カセム (著, 編集), 平井 康之 (著, 編集), 塩瀬 隆之 (著, 編集), 森下 静香 (著, 編集))で取り上げられていたたんぽぽの家の事例を既に知っていたが、FABという要素がどう絡んでくるのか興味を惹かれ、すぐに申し込みをした。

セミナーでは
水野大二郎さん(慶應義塾大学環境情報学部准教授)
三野晃一さん、藤川千尋さん(カガワ3Dプリンタfunコミュニティ“不便改善グッズ”チーム)
吉行良平さん(吉行良平と仕事)藤井克英さん(GOODJOB!センター設立準備室)
といった方々が登壇されていた。

それぞれの講演内容について、順を追って振り返っていきたい。

◉水野大二郎さん(慶應義塾大学環境情報学部准教授)

水野さんはIoTとFABが未来の仕事や暮らしをどう変えていく可能性があるのか、総務省での実際の取り組みを軸に社会的な視点を交えてお話をされていた。
日本産業の未来の形として、IoTなどのテクノロジーが発達していくことで、既存の工場は、「スマート工場」化し、大量生産品と同価格のオーダーメイド品が作られるような未来が来る、と水野さんは述べた。その例としてUNIQLOUNIQLO CUSTOMIZE、JINSJINS PAINTなどを挙げられていた。
確かに、最近はFAB(主に3Dプリンター)を活かしたオーダーメイドサービスが増えている印象があったが、インダストリー4.0と呼ばれる産業の形を変える取り組みは、そのレベル感の話ではないのだろう。
極端な話、オーダーメイドのプロダクトを100均で買えるようになるかもしれない、ということである。
こういった未来の予測に対して、水野さんは「Design by People」という考え方を主張していた。
これは一人一人が満足できるものを自分で作れる環境を作り出すことで、大量生産品にはない価値を見出そうという考え方である。
そして、そのためには必要なものが「FAB」である。
FABは機材、ソフトウェア、素材、データ形式の理解を促進し、小規模ビジネスのための「共感」に基づく生態系を構築する手助けとなる。
購入者自身が価値づける「体験」によって大量生産品では得られないものを得られる可能性を秘めている。
水野さんのお話を聞いて、FABは社会を作ることができるかもしれないと感じた。その第一歩として、まずは福祉から、ということなのだろう。
水野さんはFAB社会の構築のために法・社会制度についての手引きを作っているとのこと。
FABに通じる一人のデザイナーとして、注目せずにはいられないだろう。


◉三野晃一さん、藤川千尋さん(カガワ3Dプリンタfunコミュニティ“不便改善グッズ”チーム)http://sunsun3d.jimdo.com/


カガワ3Dプリンタfunコミュニティ“不便改善グッズ”チームの三野晃一さん、藤川千尋さんは、障害のある方と3Dプリンターとの関わり合いの実例をお話されていた。
3Dプリンターは、使用するにあたってあまり体力を必要としないし、体が不自由な人でも扱うことが可能である。
また、個人にカスタマイズすることができるという特徴を持つ3Dプリンターはマイノリティになってしまい大量生産品の恩恵を受けられない障害者の方々を救う可能性を秘めている。それらの点からも、FAB と福祉の相性は良いのだろうと感じた。
藤川さんの言葉で3Dプリンターは障害のある方を前向きにする、というのがあった。
3Dプリンターは体力がいらないので、健常者の人と対等に仕事が出来る、これは障害のある方にとって、とてもすごいことなのだという。
インクルーシブデザインの観点から見ると、障害のある方は健常者の人たちが感じたことのないフィードバックをたくさん持っている。
これらを活かして、デザインとしてアウトプットしていくようなポジティブでクリエイティブなコミュニティを作ることができれば、
障害のある方達の仕事のかたちは変わるかもしれない、と感じた。


◉吉行良平さん(吉行良平と仕事)藤井克英さん(GOODJOB!センター設立準備室)

吉行良平さんと藤井克英さんはたんぽぽの家アートセンターHANAでの取り組み事例を紹介されていた。
デザイナーと障害者の共同ブランド「TOMORROW IS TODAY」http://to-is-to.tumblr.com/についてや、アートセンターで生まれた商品「鹿コロコロ」http://www.yu-nakagawa.co.jp/p/2462などのお話が面白かった。
これらのプロダクトをビジネス化するにあたって、FABは生産を支える根幹となっている。FABツールを使用することで障害のある方でも安定したクオリティの製品を作れるようになり、またその生産スピードも高めることができている。
FABは障害のある方にモノづくりの仕事を与えること可能とし、なおかつビジネスとして成り立たせるための生産ラインを構築することという観点においても、FABが果たす役割は大きい。
藤井さんの話によれば、障害のある方は自由な表現は苦手なのに対し、枠組みの中での創造力は目を見張るものがあるという。
FABによる枠組み作りと障害のある方達のクリエティビィティがあわさって生み出されたそれらの商品は彼らにしか作れることのできない「特別な良いもの」になっていると強く感じた。

以上全三部のセミナーを聴き終えて感じたことは、FABと福祉の親和性の高さである。
間違いなく、FABと福祉は繋がるべき存在なのだろうと思った。
FABはコミュニティを生み出し、モノづくりのハードルを下げ、生産ライン構築によってビジネス化を可能にしてくれる。
FABは障害のある方が不可能としていたことを可能にしてくれるのだ。

水野さんによる、社会と未来を見据えた大きなFAB構想から、実際の福祉でのFABシーンまで、
大小の規模感での、FABと福祉の「今」を垣間見ることができた。

FABが福祉をどう変えていくか、とてもワクワクするし、
自らもその中で何かを生み出してみたくなった。
自分なりに、アイデアを考えて見るとしよう。